ダイヤモンドといって思い浮かべるのは、ラウンドブリリアントカット(丸い形のダイヤモンド)だという人がほとんどかと思います。
現在、婚約指輪(エンゲージメントリング)のダイヤモンドでも、オーソドックスとされているのは、58の面を持つラウンドブリリアントカットです。
ダイヤモンドを余すところなく輝くカットとして、人気を誇っているのですね。
じつは、このラウンドブリリアントカットが誕生するまでには、長い年月がかかりました。
現在、ダイヤモンドのカットはラウンドブリリアントカットが主流ですが、それ以前はどのようなカットがなされていたのでしょうか。
また、ラウンドブリリアントカットは、誰の手によって、いつ誕生したのでしょうか。
意外と知らないダイヤモンドのカットの誕生秘話に迫ります!
はじまりは古代インド!神秘の力を持つ宝石?
紀元前からダイヤモンドが採掘されていた古代インドでは、その比類ないかたさと独特な輝きから、神秘的な力を持つ宝石と信じられていました。
古代インド人は当時から高度な研磨技術を身につけており、ダイヤモンドに平らな研磨面を施すこともできていたそう。
しかし古代インドでは丸く磨いたカボションカットのように面をつけていないカットが好まれていたため、ダイヤモンドの輝きが増す、研磨面のあるカットの開発が進むのは中世ヨーロッパの時代に入ってからでした。
ヨーロッパへ輸出後、輝きが求められる時代へ
14世紀に入ると、インドから運ばれてきたダイヤに対し、かたさだけでなく輝きにも注目されるようになりました。
14世紀末には、パリでダイヤモンドの研磨職人が働いていたとの記録が残っており、当時の研磨職人たちはさまざまな形にダイヤモンドをカットしていたのです。
この時代から、ダイヤモンドの輝きが求められるようになりました。
ローズカットの誕生
16世紀に入るとローズカットが誕生。
17世紀に入ると、南アフリカやインドからさらに多くのダイヤモンドが輸入されるようになり、人々のダイヤモンドへの関心も高くなりました。
また、ルイ14世の時代にはファセットと呼ばれる、ダイヤの研磨面に反射する強い輝きを追求するように。
これは、夜会のときにろうそくの光を拾い、より強く輝くダイヤが求められたからです。
面の少ないテーブルカットなどはローズカットに勝てなくなり、ここからブリリアントカットのはじまりへとつながっていきます。
ローズカットからブリリアントカットへ
初期のローズカットは原石の形に合わせて研磨していたのですが、次第に研磨面が多い複雑なカットへと変化。
平らな底面から中央に向かって高さをつけながら、24の三角形の面が組み合わされて研磨されているローズカットは、形がバラのつぼみに似ていることからこの名前がつけられていったのです。
その後、研磨職人たちはダイヤモンドをいかに輝かせることができるかを考え、試行錯誤の結果、ブリリアントカットのはじまりといわれるマザランカットを生み出しました。
研磨面が少ない非常にシンプルな形ですが、ここからブリリアントカットの改良が重ねられていったのです。
ラウンドブリリアントカットへの変化
17世紀末には、ペルッツィというベネチアの研磨職人によって、現在のブリリアントカットに繋がる最初の58面体を持つカット、オールドマインカットが開発されました。
現在のブリリアントカットの原型ともいわれますが、このときはまだ正方形に近い外形だったそう。
その後、オールドマインカットから発展した、円形のオールドヨーロピアンカットが登場。
研磨面の数は58と変わりはないですが、形が大きく変化しました。
現在のラウンドブリリアントカットに非常に近い形になったのですね。
正方形に近い形から円形に変わったことで、輝きに劇的な変化が生まれることに。
ダイヤモンドの輝きの美しさを決定づける3つの要素、「ブライトネス」「ディスパージョン」「シンチレーション」を引き出すことに成功したのです。
20世紀から今のダイヤモンドカット
19世紀末には、ダイヤモンドのカットの再開発がはじまりました。
ブリリアントカットはパビリオン側が浅くなり、さらに現在の適正なプロポーションへと近づいていきます。
1919年には、ダイヤモンドの光学的特性に基づいたブリリアントカットのプロポーションが、マルセル・トルコフスキーにより発表されました。
現在の一般的なブリリアントカットのベースとなっているものです。
このカットで作られる輝きが見る人に強い影響を与え、ダイヤモンドは宝石の王様といわれるように。
研磨職人の腕だけでなく研磨機械の発達によって、現在はさらにさまざまなカットが存在しています。
まとめ
今では婚約指輪(エンゲージメントリング)を見ると、当たり前のようにラウンドブリリアントカットがありますが、古代インドでは、ダイヤモンドは神秘的力を持つ宝石だと信じられ、現在のカットとは全く違うカットが施されていました。
そして面の少ないローズカットやテーブルカットの時代を経て、現在のブリリアントカットのベースになるカットが発明されたのです。
カットの開発が無ければ、今でも婚約指輪(エンゲージメントリング)には輝くダイヤモンドがついてなかったかもしれません。
そう考えると、カッター達の研究やカットの変遷は偉大ですね!